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大阪高等裁判所 昭和33年(う)1026号 判決 1958年12月02日

控訴人 藪清紡績株式会社こと藪清紡織株式会社代表者 藪内清十郎 外二名

弁護人 伊藤増一

検察官 西ケ谷徹

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

弁護人伊藤増一の控訴趣意第一点(法令適用の誤の主張)について。

所論は被告人藪内清十郎同草竹竹夫の原判示各所為は夫々法律上包括して一罪を構成するに過ぎないところ、原審はこれを併合罪と認めて該当法条を適用し処断したのは違法であると主張するのである。而して原審が被告人等の原判示事実は労働基準法第六二条違反の罪の併合罪に当るものと認め、刑法第四五条前段第四八条第二項第一〇条等を適用して処断したことは、原判文の示すとおりである。

しかし労働基準法第六二条は年少労働者及び女子労働者の健康の保護向上をはかるためにこれ等の者を一日のうち健康に有害な労働時間である同条所定の時間に使用すること(いわゆる深夜業)を禁止し、もつて年少又は女子労働者の各自の福祉を保障しようとする規定であるから、もし使用者が右法条に反して、多数日にわたり多数の年少又は女子労働者を深夜業に使用した場合には特段の事情ある場合を除き、その使用日毎に各就業者各個人別に独立して同条違反の罪が成立するものと解すべく、従つて各就業者の数に応じその就業日数に相当する数の併合罪として処断するを相当とし、これ等を包括して一罪が成立するものとなすべきでない。されば原審がこれと同趣旨に解し、本件判示各罪を包括して一罪とせず、併合罪の関係にあるものとして前記併合罪の法条を適用し夫々処断したことはまことに正当であつて、原判決には所論のごとき法令適用の誤は存しない。

同第二点(量刑不当の主張)について。

記録を精査するに、被告人藪内同草竹の両名は法規を無視して、原判示の長期間殆んど連日にわたり多数の女子を深夜業に使用したものであり、その間労働基準監督官の注意があつたにかかわらずこれを中止することなく続けていたもので、犯情甚だ重く、その他の情状も考慮すると、原審の科刑は相当であつて、所論のような事情を以て右科刑を過重であるとはなし得ない。

右のとおり各論旨はいずれも理由がないから、刑事訴訟法第三九六条に則り主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 万歳規矩楼 裁判官 武田清好 裁判官 小川武夫)

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